研究概要 |
1.宿主細胞への各ヘルペスウイルスの吸着・侵入機構の分子機構における共通性と差異を明らかにすることを目的として、すでに報告した単純ヘルペスウイルス(HSV)及びヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)に加え、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)及びサイトメガロウイルス(CMV)の主要な糖蛋白である糖蛋白B(gB)、gH,gL,gE,gl,gL,gM,gNなどをコードする遺伝子群の発現系を確立した。 2.感染に必要なG蛋白の代わりに緑色蛍光蛋白(GFP)を発現する組換え体水泡性口内炎ウイルス(VSV)を用いたシュードタイプウイルスにより、各ヘルペスウイルス糖蛋白の感染における役割を検討した。HSVの場合、gB,gD,gH,gLの組合せにより感染性を有するようになり、いずれかひとつの糖蛋白を欠くと力価は10分の1以下となった。また、中和能をもつ抗gB抗体を用いるとこのシュードタイプウイルスの感染は抑制された。この結果は、4つの糖蛋白の組合せがHSV感染に必須十分であるとする細胞融合系の実験に基づく推測を細胞フリーのウイルス感染により実証したことになる。 3.CMVのgM/gN複合体はHSVやHHV-8の複合体同様にHSVの4つの糖蛋白により誘導される細胞融合を阻害した。 4.VZV,CMVのgB,gH,gLホモローグは、HSVの4つの糖蛋白によるシュードタイプウイルス形成や細胞融合誘導を競合ないしは昂進しなかった。また、HSVgB,gH,gLをVZV,CMVの各ホモローグと置換するとシュードタイプウイルス形成や細胞融合誘導がおこらなかった。VZV,CMVのホモローグ蛋白がシュードタイプウイルスのエンベロープや細胞表面での発現を確認できることから、アミノ酸配列上で類似性はあるものの検出可能なレベルで機能を相補するものではないと考察された。
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