研究概要 |
感染防御において、抗体の果たす役割が大きいことは、ブルトン型免疫不全などのB細胞欠損で感染症への感受性が高いことからも明らかである。病原体である細菌やウイルスに対する抗体産生を考えると大きく2種類に分類される。IgM、IgG3などを中心とする自然免疫抗体とIgG1、IgG2a、IgG2bを中心とする獲得免疫抗体である。前者の抗体は主にLPS(Lipopolysaccharide)などの胸腺非依存性抗原に対して迅速に産生される。本研究においてはIgMやIgG3抗体の産生がどのような分子によって制御されているのか、検討を進める。PR105/MD-1はB細胞表面に発言し、Toll-like receptorに類似した分子である。この分子と胸腺非依存性抗原についての関係について本研究では焦点を絞って進めてゆく。我々はこれまで、RP105を欠損したB細胞はLPSばかりでなくTLR2リガンドであるリポペプチドで誘導されるB細胞増殖、抗体産生などの応答が低下していること、さらに、RP105欠損マウスでは血清のIgG3が著明に低下していることを報告してきた。本年度においては、IgG3が低下している機構について検討を進めた結果、RP105欠損マウスにおいて、IgG3のgermline transcriptが著明に低下していることが明らかとなった。さらに、RP105欠損マウスと同等の血清IgG3の低下、IgG3 germline transcriptの発現低下などは、MD-1欠損マウス、TLR2xTLR4 2重欠損マウスにおいても認められることが明らかとなった。これらの結果は、血清のIgG3の産生にB細胞に発現しているTLRが重要である可能性をしている。今後、B細胞のTLR2,TLR4,RP105/MD-1が何に反応しているのか明らかにしてゆく。さらに、IgG3は自己免疫疾患の病原性に関与することが報告されており、これらのTLRと自己免疫疾患との関係について明らかにしてゆく。
|