ケモカイン受容体とT細胞受容体(TCR)刺激とのクロストークの解明と、それらの生理学的かつ病理学的意義を明らかにすることを目的とした。まずCCR5はTCR刺激に伴って発現誘導され、その低分子アンタゴニスト:TAK-779により、CD3刺激によるmemory CD8+T細胞の増殖を抑制したことから、TCR刺激とCCR5とのクロストークが示唆された。次に、CCR5やそのリガンドであるRANTES granulesが免疫シナプスに集積することを見い出した。またTCR刺激でCCR5が実際に活性化されることをBRET Bioluminescence Resonance Energy Transfer)法を用いて、明らかにした。そこでCD8+T細胞をTCR刺激とともに合成ICAM-1をもちいてLFA-1を刺激し、細胞増殖をみる系で、TAK-779を加えると、TCR刺激後によるLFA-1の活性化が阻害された。つまり、免疫シナプスにおけるLFA-1の活性化には、免疫シナプスに存在するCCR5の活性化が重要であることを意味する。TCR刺激後のLFA-1のinside-out signalに重要なRap1の活性をRalGDSRBD-GSTを用いてpull-down法により見ると、TCR刺激に伴うRap1の活性化がTAK-779により抑制された。このことはTCR刺激によるLFA-1のinside-out signalingは、少なくとも一部はCCR5の活性化に伴うRap1の活性化を介することが示唆された。また、CCR5/CXCR3ダブル遺伝子欠損マウスを作製することにより、ケモカイン受容体CCR5とCXCR3のシグナルがCD8+T細胞の増殖へのコミットメントに重要であることをin vivoで確認し、またCCR5/CXCR3がマウス関節リウマチモデルにおいて重要な役割を果たすことも見い出した。
|