研究概要 |
本研究では、当院の検査部における実データに基づき、生化学検査、血液検査、免疫検査の間接コストを、ABC(Activity-Based Costing)法とVBC(Volume-Based Costing)法で計算し、両者のコストの差を検証した。VBC法は、コスト分配指標を1つに限定し大まかな分配を行う方法であり、日本の多くの病院で採用されている。一方、ABC法は、業務を細かく分割しその業務ごとにコスト分配指標を設定する方法である。精密なコスト計算ができる反面、計算に必要なデータ収集に労力を要する。 業務行為の設定:計算対象とした3つの検体検査の検査プロセスを、現場調査に基づき、8つの業務行為に分割した。業務行為に対応する分配指標も業務内容を考慮して8つ設定した。 データ収集:マンパワー・業務行為別作業時間・材料の消耗実績データ、および分配指標に関するデータを現場で収集した。コスト計算に必要となる上述以外のデータ(人事、材料納入、設備などのデータ)は、診療支援システムまたは病院の管理部門から入手した。 結果:ABC法による生化学検査、血液検査、免疫検査の間接コストの計算結果は、それぞれ、43,723,227円、3,069,505円、1,805,632円であった。一方、VBCでは、生化学検査が46,190,487円、血液検査が1,679,448円、免疫検査が728,429円であった。計算結果から、VBCでは、検査別に5.6%、45.3%および59.7%の偏差が認められた。 まとめ:VBCとABCのコスト計算結果を比較した。(1)ABC法は、VBC法に比べて、より正確なコスト計算ができる;(2)ABC法は、コスト管理に対して細かくコスト構造のデータか提供できる。
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