研究概要 |
すでに、我々は在住外国人の医療・保健の現状と課題に関して、外国人患者診療に70%の医師がストレスを感じていること、言葉の問題が最も大きいことを報告している。また、神戸市の小児救急拠点病院の医師、救急部看護師の多くが外国人小児救急診療で苦労する事として言語コミュニケーションをあげている。外国人集積拠点病院で外国籍であることが母子保健上のリスク要因となりえるかをベトナム人集住地域の病院ならびに欧米系外国人が集住している病院で調べたところ、外国人において帝王切開率が高く、言語コミュニケーション不足が医療の質に影響する可能性を指摘している。 在住外国人が日本人と変わらないレベルの医療を享受するためには円滑な言語コミュニケーションの果たす役割は大きい。医療通訳者による通訳は複雑な医療行為やインフォームドコンセントの場面では欠かせないが、即時性、簡便性、普遍性に難があり、医療経済的観点からも課題が残る。 そこで、今年度の研究では主訴,現症,検査,治療,説明などがコンピューター上で日本語と外国語相互にリアルタイムで翻訳できる多言語医療会話支援ソフトウエアの開発に取り組んだ。本システムを用いることによりリアルタイムに患者と医師が画面上で多言語間での会話が行なえる。本システムの開発上重要な点は医療用文例用語作成・翻訳とそれをコンピューター上に表示させるためのソフトウエアシステムの開発の2点である。また、本システムの臨床応用の現場は、緊急性の面から産科と小児救急に焦点を当てた。言語は有用性の観点から英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語を選んだ。
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