研究概要 |
広島圏域メディカルコントロール協議会(面積2,650.19km^2,サービス対象人口1,328,805人)における1年間の重症外傷を集計し,考察を加えた.平成17年度に行った救急搬送された全外傷症例を対象とした4ヶ月間のパイロットスタディーの研究の問題点を受けて,本年度は通年のデータ収集を行った.転帰調査まで終了している9月30日までの症例の結果ならびに考察は以下の通りである. 症例数は7108例,L&G症例は521例(7.3%)であった.初期評価(意識・気道・呼吸・循環の異常)にてL&G(Load & Go;外傷現場において救急救命士が,一定の基準に基づいて重症緊急であると判断する症例群を示す用語)となった症例(A群)が203例(2.9%),初期評価ではL&Gではないが全身観察(頭部から大腿部までの重度の外傷の有無)にてL&Gとなった症例(B群)が129例(1.8%),初期観察でも全身観察でもL&Gに該当しないが状況評価(受傷機転が強い外力によるもの)によってのみL&Gとなった症例(C群)が189例(2.7%)であった.L&Gに該当しない症例(D群)は全症例の92.5%であった.全体では14日以上入院中の症例が1029例(16.2%),14日以内の死亡例が52例(0.8%)であった.14日以内に死亡した52例のうち48例(92%)がA群であった.D群に3例の14日以内死亡例があった.以上より,L&Gで規定される群の中でも,特に初期評価において該当する症例は実際の転帰が有意に不良であることが明らかになった.一方,状況評価のみ該当するL&G症例は,その転帰においてL&Gでない症例との間に差が無いことが明らかになった.三次医療機関に収容が依頼された症例数は,A群123例(60.6%),B群64例(49.6%),C群46例(24.3%),D群43例(0.7%)であった.実際に三次医療機関に収容された症例数は,A群116例(94.3%),B群53例(82.8%),C群36例(78.3%),D群32例(74.4%)であった.実際の転帰に応じた病院収容がなされていたことを示すと同時に,最も危険な群が必ずしも適切な医療機関に収容されなかったという問題点も明らかになった.
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