研究概要 |
血圧の調節維持に重要な役割を果たしている抵抗血管の緊張を調節している血管周囲神経の血管収縮性交感神経および血管拡張性ペプチド作動性神経機能変化を改善し,この神経の再分布(神経リモデリング)を促す新しい作用機序を持つ新規薬または神経再分布促進薬を探索すると同時に,この機序を持つ新規薬の開発における評価法を確立する目的で行った.さらに,病態において血管周囲神経が血管の機能変化に応じて再分布を行う血管周囲神経リモデリングについて検討した。 本年度の研究により下記の知見を得た。 1)血管周囲神経の再分布と再分布促進薬の探索:血管周囲神経の再分布を検討するために、実験動物として10週齢のWistar系雄性ラットを用い、上腸間膜動脈の起始部付近を剥離し、10%フェノール液を血管周囲に塗布した。術後3、5、7、10、15日目に腸間膜動脈血管床を摘出し、第1、第2および第3分枝の血管を固定してホールマウント標本とし、ペプチド含有神経(CGRP神経)および交感神経(ニューロペプチドY ; NPY含有)の免疫染色を行い,血管周囲神経分布密度の経時的変化を検討した。その結果、NPY神経分布密度は5目で最も減少しその後徐々に回復した。一方、CGRP神経密度は3日目に最大減少し殆ど回復しなかった。さらに、除神経された血管の機能を調べるために、フェーノール塗布術後5および10日目に腸間膜動脈血管床の灌流標本を作製し、その灌流圧を抵抗血管の収縮張力として測定した。その結果、血管周囲神経性反応の減弱が観察された。次に血管周囲神経再分布促進薬を探索するために、除神経術施行後、神経成長因子(NGF)、アドレノメジュリン(AM)、アンジオテンシンIIを植え込み型浸透圧ポンプで連続投与し、上記の方法で神経の分布を検討した結果、NGFおよびAMに血管周囲神経再生作用があることが示唆された。 2)病態動物における血管周囲神経リモデリングとその改善薬の探索:平成17年度研究計画の準備として、SHRの加齢における血管周囲神経の分布と機能変化を検討する目的で、8および15週齢のSHRとWKYを用い、腸間膜動脈の神経密度を免疫組織学的に検索した。その結果、SHRではCGRPおよびAM神経のみが加齢に従って減少することが観察された。一方、SHRのNPY神経分布はWKYよりも大きかったが、加齢にしたがって変化しなかった。SHRでは血管神経リモデリングが起こっていることが示唆された。
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