研究概要 |
血圧の調節維持に重要な役割を果たしている抵抗血管の緊張を調節している血管周囲神経の血管収縮性交感神経および血管拡張性ペプチド作動性神経機能変化を改善し,この神経の再分布(神経リモデリング)を促す新しい作用機序を持つ新規薬または神経再分布促進薬を探索すると同時に,この機序を持つ新規薬の開発における評価法を確立する目的で行った.本年度の研究により下記の知見を得た。 1)平成16年度における研究において、フェノール塗布法により減少した神経分布が再生することが明らかとなり神経リモデリングが生じることを見出した。この実験的神経リモデリング法を用いて血管周囲神経再分布促進薬を探索するために、除神経術施行後、神経成長因子(NGF)、アドレノメジュリン(AM)、アンジオテンシンII(AngII)、肝細胞成長因子(HGF)を植え込み型浸透圧ポンプで連続投与し、腸間膜動脈を免疫染色し、神経分布密度の測定を行った。その結果、NGF、AM、HGFに血管周囲神経再生作用があることが判明した。AngIIの作用に対しては、AT1およびAT2受容体遮断薬の併用効果について検討した結果、AngIIはAT2受容体を介して血管周囲神経再生効果を起こすことを明らかにした。さらに、灌流標本を作製し、再分布した神経の機能性について検討した結果、交感神経性とCGRP神経性の血管反応が回復することも判明した。また、α1受容体およびAngII受容体蛋白質量をWestern法を用いて詳細に検討した結果、NGF投与によって増加することを明らかにした。また、血管組織中のNGF量をELISA法にて測定し、神経リモデリングにいてはNGFの産生が著明に減少することも明らかにした。 2)8週齢SHRおよびWKYに各種抗高血圧薬としてアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬,テモカプリル,アンジオテンシンII(AII)受容体拮抗薬(カンデサルタン,ロサルタン),血管拡張薬(ヒドララゾン)を飲料水または餌に混入して7週間与え,薬物治療を行ったSHRとWKYの血管周囲神経の分布密度と機能について解析した。その結果、AngII抑制薬のみがSHRにおいて変化した血管周囲神経の分布と機能を改善した。以上の結果から、血管周囲神経リモデリングにはAngIIが重要な役割を果たしており、AT2受容体刺激作用を持つ薬物の開発が重要であることが明らかとなった。
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