研究概要 |
血圧の調節維持に重要な役割を果たしている抵抗血管の緊張を調節している血管周囲神経の血管収縮性交感神経および血管拡張性ペプチド作動性神経機能変化を改善し,この神経の再分布(神経リモデリング)を促す新しい作用機序を持つ新規薬または神経再分布促進薬を探索すると同時に,この機序を持つ新規薬の開発における評価法を確立する目的で行った.平成16〜18年度研究により下記の知見を得た。1)フェノール塗布法により減少した神経分布が再生することが明らかとなり神経リモデリングが生じることを見出した。この実験的神経リモデリング法を用いて血管周囲神経再分布促進薬を探索するために、除神経術施行後、神経成長因子(NGF)、アドレノメジュリン(AM)、アンジオテンシンII(AngII)、肝細胞成長因子(HGF)を植え込み型浸透圧ポンプで連続投与し、腸間膜動脈を免疫染色し、神経分布密度の測定を行った。その結果、NGF、AM、HGFに血管周囲神経再生作用があることが判明した。AngIIの作用に対しては、AT1およびAT2受容体遮断薬の併用効果について検討した結果、AngIIはAT2受容体を介して血管周囲神経再生効果を起こすことを明らかにした。2)8週齢SHRおよびWKYに各種抗高血圧薬としてアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬,テモカプリル,アンジオテンシンII(A II)受容体拮抗薬(カンデサルタン,ロサルタン),血管拡張薬(ヒドララジン)を飲料水または餌に混入して7週間与え,薬物治療を行ったSHRとWKYの血管周囲神経の分布密度と機能について解析した。その結果、AngII抑制薬のみがSHRにおいて変化した血管周囲神経の分布と機能を改善した。以上の結果から、血管周囲神経リモデリングにはAngIIが重要な役割を果たしており、AT2受容体刺激作用を持つ薬物の開発が重要であることが明らかとなった。さらに、神経成長因子によるCGRP神経の再分布促進作用はAT2-R遮断薬によってのみ抑制され、NPY神経再分布促進作用はAT1-R遮断薬によってのみ抑制された。一方、脊髄後根神経節におけるAT2-RmRNA量はNGFによって増加し、RT1-R遮断薬によって抑制された。AT1-RmRNA量も神経成長因子によって増加したが、AT2-R遮断薬によって抑制された。以上の結果から、神経成長因子による血管周囲神経再分布促進作用は脊髄後根神経節のAT2-R受容体が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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