1 マウス腎癌細胞株Renca細胞を、野生型マウスの尾静脈に接種すると、接種後2週で肉眼的に肺転移結節が生じ、その後も結節数は増加し、接種26日目で全例が死亡した。転移巣では、TNF-α遺伝子・蛋白の発現が亢進していた。TNFレセプターp55欠損マウスにRenca細胞を同様に接種すると、接種21日までは肺での転移結節の数に、野生型マウスと有意な差は認めなかった。、しかし、接種21日目以降、TNFレセプターp55欠損マウスでは、血管内皮増殖因子の発現と転移巣での血管新生が減弱し、腫瘍細胞のアポトーシスが顕著となり、接種後23日目以降で転移巣が自然退縮し、接種後26日目で大半のマウスが生存していた。以上の結果から、TNFレセプターp55が転移巣内での血管新生、ひいては転移巣の維持に密接に関与していて、このモデルでの遺伝子発現パターンを検索することで転移巣の維持に関与している因子を同定できる可能性が示唆された。 2 マウス肝発癌モデルおよびヒト肝臓癌における、前癌病変・肝癌細胞の一部で、セリン/スレオニンキナーゼPim-3が選択的に発現していることを見出した。さらに、RNA干渉法にて培養肝癌細胞株でのPim-3遺伝子発現を抑制すると、肝癌細胞株の細胞死が誘導されることを明らかにした。Pim-3下流の標的分子の同定を目的に、酵母ツーハイブリッド法を行った結果、Pim-3自身を含む16種の候補遺伝子が得られた。さらに、Pim-3は、正常の肝臓・大腸組織では発現が認められないにもかかわらず、肝癌・大腸癌由来の細胞株および癌組織において発現が増強していたことから、これらの癌での新たな癌マーカーとして有用である可能性も示唆された。
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