研究課題
基盤研究(B)
1)原癌遺伝子Pim-3に関する研究マウス肝癌発癌モデルにおける前癌と癌病変を、ディファレンシャル・ディスプレイ法を用いて解析した結果、正常肝組織では発現が認められない、セリン/スレオニン・キナーゼ活性を保有する原癌遺伝子Pim-3の発現が選択的に亢進していることを見出した。ヒト肝癌組織でも同様にPim-3の発現の亢進を認めた。さらにヒト肝癌細胞株でPim-3の恒常的な発現が認められた上に、Pim-3発現をsiRNA法にて抑制すると、肝癌細胞株のアポトーシスが誘導された。Pim-3は、肝臓のみならず、膵臓・大腸などの内胚葉由来臓器でも正常状態では発現が認められないのに対して、これらの臓器の前癌から癌病変部位において発現が亢進していた。ヒト膵癌細胞株ならびにヒト大腸癌細胞株においても、Pim-3の恒常的な発現とともに、好アポトーシス分子であるBadが112番目のセリン残基がリン酸化された不活型として存在している上に、Pim-3と共局在していた。Pim-3の発現をsiRNA法にて抑制すると、Badの112番目のセリン残基のリン酸化が減弱するとともに、抗アポトーシス分子であるBc1-XLの発現も低下し、細胞のアポトーシスが誘導された。以上の結果から、Pim-3は肝臓・膵臓・大腸などの内胚葉由来臓器においてアポトーシスを抑制することによって癌化に関与していること、さらに癌化に伴って発現が亢進するがんマーカーとしての挙動を示すことも示唆された。2)ケモカインの癌の進展・転移過程での役割の解析ジエチルニトロサミン投与による肝癌発症モデルでは、発癌の初期過程で、CCL3-CCR1系が抑制的に働くのに対して、後期では血管新生を誘導することで促進的に働くことを見出した。さらに、肝転移モデルでは、CCL2-CCR2系がIto細胞の活性化→血管新生を促進することで、肝転移を促進することを見出した。
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