研究概要 |
RB1CC1機能消失と癌との関連について、これまでに50例以上の各種の癌細胞株において遺伝子変異を検索したが、新たな変異は見つからなかった。また、発現消失のメカニズムのひとつとしてRB1CC1のコアpromoter部のメチル化の程度をbisulfite PCR法にて検索したが、癌における過剰メチル化等、RB1CC1遺伝子silencingを示唆するものは見つからなかった。一方で、RB1CC1はp53,hSNF5/INI1と複合体を形成することによって、p21,p16の発現を促す転写調節因子複合体となっていることが解った。RB1CC1はこの機構を介してRB経路を総合的に増強する(投稿準備中)。 RB1CC1機能と神経、筋等の各種変性疾患との関連については、これまでに神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、等)の病理解剖検体よりの標本を中心にin situ hybridization法,免疫組織化学法を行い、解析を進めてきた。神経変性とともにRB1CC1の発現低下、機能消失が著明に進行している症例のあることがわかってきた。また、Neuro2a神経細胞培養系において、RB1CC1 siRNAにより神経分化抑制(分化率、神経突起長の抑制)、神経細胞死が起こることを明らかにした。ここでみられる分化抑制は、RB1CC1の発現低下により、mTOR活性が過剰に抑制され、十分なtranslationが行われないために起こっており、これが起因となって神経突起の短縮、細胞萎縮、細胞死が起こることが明らかとなった(投稿中)。
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