メチル化に重要な酵素であるDNMT3AとDNMT3B、および幽門腺特異的ムチンMUC6の発現調節機構の解析を行った。その結果、MUC6は炎症時に発現する転写因子NFκBにより正に調節されることを明らかにした。また、がんや炎症細胞で発現が高まることが報告されているSp1とSp3がMUC6とDNMT3A・3Bを正に調節していた。DNMT3Aと3Bはde novoのメチル化酵素なので、Sp因子による活性化によりメチル化が開始・進展し、重要な遺伝子のメチル化によりがん化へと進む可能性を示唆する。これらの結果は、炎症に関連したがんでは転写異常により新たに発現するタンパク質ががん化に関与する可能性を示し、今後さらに研究を進めたい。 炎症に関連した消化器のがんではCDX2の異所的発現がおこるという仮説から、胆嚢がんでのCDX2の発現を解析した。その結果、正常胆嚢上皮では発現していないCDX2が、胆嚢がんでは36.8%で発現していた。さらに、管状線がんの中では高分化型で低・中分化型よりCDX2の発現頻度が高く、胆嚢がんでも胃がん同様にCDX2が分化に関連していることがわかった。今後は他の消化器、例えば胆管がんなどでもCDX2の発現を解析していきたい。さらに、炎症時にCDX2の異所的発現がなぜおこるのかを、発現調節機構の点から解明していきたい。
|