研究概要 |
過重労働や多様化する雇用形態の影響が、労働者のメンタルヘルスを含む心身の健康状態に与える影響を調べ、エビデンスに基づき現状に即した産業保健活動のあり方を提言するのが本研究の目的である。最終年度である本年度は特に雇用形態の多様化が労働音の健康に及ぼす影響に焦点を当てて研究を行うと共に、今後の研究課題を整理した。 今年度論文として発表した主な研究内容は以下の通り。1.労働負荷の生理学的指標を選択するため感覚誘発電位と身体感覚増幅尺度の関係を検討し示した(Nakao, Barsky他)。2.慢性腎機能障害者における雇用状態とストレス受容能に関係があることを示した(Takaki, Yano)。3.身体愁訴とうつ病の関係を職域で調べ、訴えの多いものが翌年うつになり易いことを示した(Nakao, Yano)。4.職場でのうつ病のスクリーニングのため質問項目の絞り込みを行い、「気分の落ち込み」と「みじめ」だけでうつ病をかなり適確に診断できることを示した(Takeuchi, Nakao他)。5.職域での保健指導の方法として面接とe-mailを用いた方法の効果を比較対照試験で調べ、前者の効果が高いことを示した(Araki他)。6.中国の労働者において労働能力を精神的、心理的側面から測定し、そこに及ぼすストレスや教育歴の影響を調べた(Zhong他)。 また書籍により職域健康管理における健康診断の限界と一次予防の重要性をについて指摘した(矢野)他、医学教育の方法と事例を示す書籍の中で、過重労働の健康影響とそれに対する対策を取りあげた(矢野他)。 本研究テーマは学術的重要性だけでなく、今日的社会的重要性が極めて高く、最新の情報を収集整理すると共に、講演会などで3年間の研究をとりまとめその成果の普及を図った。
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