研究概要 |
平成16年度の研究成果としては、以下のことが明らかとなった。まず、4種の臭素系難燃剤と、2,4,5-TBPを選定し、上記5種の臭素系化合物の熱及び光分解実験を行った。その結果、光分解では、2,4,6-TBP、DeBDE及びHBBから、熱分解では、5種の全ての化合物から、臭素化ダイオキシン類が生成することが確認された。次に、実際の環境中の臭素系難燃剤(PBDEs)と臭素化ダイオキシン類の汚染を調査することを目的として、河川水中の上記化合物の汚染度を検討した。その結果、水質試料においては、大和川及び淀川の両河川において大量のPBDEsが含んでいることが観察され、上流でPBDEsの排出源である工場が存在し、これら汚染物質は、河川経由で排出されていることが推察された。最後に、底質試料を用いて、臭素系難燃剤及びダイオキシン類の汚染実態の解明を行うことにした。そこで、瀬戸内海沿岸地域から採取した底質試料中の有機臭素系化合物による汚染実態の解明を試みた。その結果、臭素系難燃剤であるPBDEsとTBBPAに関しては、大阪湾沿岸地域で採取した底質中に特に高い汚染を示したことから、この地域では、上気した両難燃剤等が大量使用されていることが推定された。また、興味深い汚染パターンの1つとして、今治の試料中には、現在使用されていないはずのPBDEs製品が用いられている可能性を観察した。さらに、特筆すべき観察結果としては、岡山県水島の試料中に、極めて高濃度のPBDDs/DFs汚染が観察されたこと、並びにその汚染の殆どがPBDDs由来の汚染であることが明らかになったことであった。また、PBDDs/DFsの汚染に関して、臭素系難燃剤の熱及び光分解パターンと、水質や底質等の実試料中の環境汚染パターンが似ていること、並びに熱分解試料と環境試料に共通のピークが観察されることからも、臭素系難燃剤から生成した臭素化ダイオキシン類が環境汚染を引き起こしている可能性が強く示唆された。
|