研究課題
基盤研究(B)
Encephalitozoon cuniculiは新興病原体として1996年のWHO報告に記載されたミクロスポリジア寄生性病原体である。この病原体は人獣共通寄生体とも考えられており、各種の動物が感染し、その分布は世界的である。わが国における流行は、ペットウサギと動物園リスザルについての感染が現在の関心事であり、その流行は年々増加、全国に拡大しつつある。けれども、ヒトのミクロスポリジア症は1958年の1例を除き報告がない。ほかの国における感染者のほとんどの例はAIDS患者であり、稀な例として腎移植者に感染の報告がある。E.cuniculiはこのように日和見病原体と見なされている。AIDS患者におけるE.cuniculi感染例はEncephalitozoon bieneusiやEncephalitozoon intestinalisほど一般的ではないが、増加傾向にある。ヒトのE.cuniculi感染に関する多数の血清学的研究が報告されている。けれども、ミクロスポリジア血清流行の程度は使われた血清学方法に依存して大いに変動している。多分、特異抗体測定に不適な抗原の使用による。最近、E.cuniculi極管に対する特異IgG抗体がE.cuniculiの実験室内感染事故症例で証明された。極管は典型的なミクロスポリジア構造であり、宿主細胞に感染する際の必須なオルガネラである。本研究では、発芽E.cuniculi胞子を利用した酵素免疫染色法を開発し、人におけるE.cuniculi感染の血清疫学に応用した。この方法により、180名の地域住民の61名(36.7%)に極管に対するIgM抗体を検出した。更に、献血者200名中72名(36%)に同抗体を検出した。抗極管IgM抗体の最も高い陽性率は20歳以下の住民と献血者に認められた。即ち、20歳以下の地域住民では61%(18/31)、献血者では60%(6/10)が極管抗体陽性であった。このような高い陽性率は年齢とともに減少する傾向を示した。しかし、CD4細胞200以下で30歳以下の21名のHIV感染者で調べた限り、抗極管IgM抗体は検出されなかった。抗体価が最も高かった2名の健康人の血清を用いて2次元電気泳動後のイムノブロッティング分析を行ったところ、50kDa PTP1タンパク質と優先的に反応することが判明した。これらの血清疫学および免疫プロテオミクスによる結果は健康人における抗E.cuniculi IgM抗体が感染後の獲得抗体ではなく、特異的な自然抗体であることを示唆していると思われた。ヒト抗極管抗体の更なる研究が防御免疫、予防医学の面から行われる必要があると考えられた。
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