照明環境が乳がん発生率を高めているという仮説がある。夜間での照明への暴露が、エストロゲンなどの性ホルモンの制御に関わるメラトニン産生を抑えるので、その結果として高エストロゲン状態がもたらされ、乳がんリスクの増加につながるという可能性が考えられている。本研究では、ケース・コントロール研究のデザインを用いて、夜間における照明環境、すなわち深夜を含む夜間の照明暴露時間、睡眠時における照明の強さなどと乳がんリスクとの関連を評価し、また、その機序を説明するものとして、横断研究のデザインで一般集団を対象に照明環境と尿中および血中測定によるメラトニン値とエストロゲン値および両者の関連性を調査することを目的とした。 市内病院で把握された乳がん患者178名、同病院における乳がん検診受診者より選択されたコントロール433名を含むケース・コントロール研究では、週末に、メラトニンのピーク時、即ち午前1-2時まで就寝していない女性では就寝している女性に比べ、年齢補正後乳がんのリスクが上昇する傾向が認められたが、平日の就寝時刻や睡眠時における照明環境のレベルと乳がんとの関連性は認められなかった。深夜夜勤歴のある女性はない女性に比べ有意な乳がんリスクが上昇が見られた。横断研究では、午前1-2時に平日就寝していない女性はそうである女性に比べ尿中aMT6-s値は有意に低かった。また平日、週末ともこの時間帯に就寝していない女性のエストラジオール(E2)値は就寝している女性に比べ高かった。しかし、尿中aMT6-sとエストラジオール、エストロン、アンドロゲン値との関連性はなく、メラトニン、夜間照明暴露、血清エストロゲン・アンドロゲンのリンクを示すデータは認められなかった。尿中メラトニンは野菜摂取と有意な正の関連性を示した。
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