研究概要 |
Bangladeshにおける感染性下痢症の低栄養児に難消化性オリゴ糖を摂取させ、成長、発育、下痢症の程度などに及ぼす影響を調査・研究するため、International Center of Diarrhea Disease Research Bangladesh (ICDDR, B)と共同研究をした。平成16年11月より17年6月まで6ヶ月間、ICDDR, Bのフィールドの一部であるDahka市のスラム街Mirpu r地区で調査を実施した。2-4歳児150人を2群に分け、75人はプラセボ(ブドウ糖1g)群で、他の75人はフラクトオリゴ糖(FOS)2g投与群とした。これらの糖質をORS(50mL)に添加した飲料を、フィールドワーカーが毎日対象家庭を訪問して対象児に直接摂取させ、下痢の状態、食事摂取状況、体調などを問診させ、記録した。体重は2日に1回、身長は1ヶ月に1回測定した。生データの管理はICDDR, BのIP-SIPであるDr.SakerとDr.Wahedが行ない、データ解析は日本で行なった。6ヶ月間FOSを継続的に摂取させた結果、幼児の体重、身長、上腕位の発育はプラセボ摂取群に対する有意な増加は認められなかった。体位の増加はFOSおよびプラセボ摂取群のいずれも緩やかな成長を維持した。下痢の発症(episode)はFOS摂取2か月後および3ヵ月後に、また下痢の頻度(frequency)は摂取4ヵ月後にプラセボ摂取群に比べて有意に低減した。FOS群およびプラセボ群を問わず、いずれの群においても咳を伴う疾病への罹患が多く、ほぼ全ての幼児が医師より抗生物質投与を受けていた。2から4ヶ月日に認められた下痢に対する有意な効果がその後消失した理由は明らかではないが、これら他の疾患への罹患および抗生物質投与などが要因の一つではないかと推察される。 一方、食品素材として利用されている各種オリゴ糖の機能性や代謝特性の差異を明らかにするために、フラクトオリゴ糖、ガラクトシルスクロース(GS)およびイソマルトオリゴ糖(IMO)含有飼料でラットを飼育し、比較・検討した。いずれのオリゴ糖も難消化性として一括して機能性を強調した食品へ利用されているが、ほとんど消化されないFOS、部分消化されるGS、よく消化されるIMOには、現在提示されている機能性に歴然とした差異のあることを明らかにした。機能を協調した食品へ利用する場合は、その違いを十分に理解して用いる必要がある。
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