研究概要 |
Bangladeshにおける感染性下痢症の低栄養児に難消化性オリゴ糖を摂取させ、成長、発育、下痢症の程度などに及ぼす影響を調査・研究するため、ICDDR,Bと共同研究の提携をおこない、2004年11月〜2005年6月まで6ヶ月間、Dhaka市のスラム街で調査を実施した。2〜4歳児150人を2群に分け、75人はプラセボ(ブドウ糖1g)群で、他の75人はフラクトオリゴ糖(FOS)2g投与群とした。これらの糖質をORS(50mL)に添加した飲料を、フィールドワーカーが毎日対象家庭を訪問して対象児に直接摂取させ、下痢の状態、食事摂取状況、体調などを問診させ、記録した。体重は2日に1回、身長は1ヶ月に1回測定した。その結果、FOS投与による感染性下痢症の有意な抑制効果は観察されなかった。これは、抗生物質使用頻度が高いために、FOS投与の影響が相殺されたものと考える。しかし、下痢持続期間の短縮、下痢発生頻度の減少などが観察された(Tropical Medicine and Health,43:2006)。この他、キシリトール、ラクチトール、エリスリトールの一過性下痢に対する最大無作用量を明らかにした(J Nutr Sci Vitaminol,53:2006)。また、これらの大量摂取による一過性下痢が食物繊維との同時摂取によって抑制されることを観察した(Eur J Clin Nutr [Epub ahead of print])。一方、食品素材として開発された各種オリゴ糖の機能性や代謝特性の差異を明らかにするために、FOS、ガラクトシルスクロース、ラクチュロースおよびイソマルトオリゴ糖含有飼料でラットを飼育し、プレバイオティクス効果の違いを検討した。その結果、オリゴ糖の性状によって、腸管からのCaおよびMg吸収促進効果に差異のあることが観察された(栄養・食糧学会誌印刷中)。また、難消化性オリゴ糖・糖アルコールの大量摂取による一過性下痢の修復課程において、腸内細菌叢の変化と短鎖脂肪酸生成が連動して変化することを明らかにした。これらの一連の研究成果に対して、日本栄養・食糧学会学会賞が授与され、この内容を総説にまとめて公表した(日本栄養・食糧学会誌59:2006)。
|