研究概要 |
歯の健康が全身の健康を増進することを示すため、自記式問診票によってもかなり正確な口腔状態のデータが得られる歯科医師を対象にしたコホート研究を計画した。ベースライン調査は自記式問診票を配付・回収することにより実施する。収集する情報は、性・年齢、既往歴・家族歴、口腔状態(喪失歯数、歯周の状態など)、生活習慣(とくに食習慣)、心理要因などである。対象者の追跡には、あらかじめ同意を得た上で、歯科医師共済制度で把握される疾病罹患・死亡状況を利用する。 本年度は27県の県歯科医師会においてベースライン調査を行い、3月23日現在12,436名が参加した。昨年度までの実施分も含めると、参加者は43県歯科医師会の約21,800名に達している。さらに歯科医師共済制度を利用し、研究参加者の死亡および疾病罹患状況の追跡調査を開始している。 データ入力が終了した17県歯科医師会(有効回答者数9,625名[女性632名]、有効回答率46.8%、平均年齢±標準偏差51.8±12.1歳)における横断的検討では、CPI2以上の歯周病に関連する要因(p<0.10)として年齢、喫煙、糖尿病、低いブラッシング頻度、高血圧、低い精神的健康度、激しい運動をしないが認められ、また5歯以上の歯牙喪失の関連要因として年齢、喫煙、糖尿病、歯間清掃用具の不使用、高血圧、激しい運動をしないが挙げられた。さらに喪失歯数が多い群ほど、蛋白質、脂質、カルシウム、鉄、カロテン、ビタミンCおよびE、食物繊維の摂取量は少なく、逆に炭水化物は摂取量が多い傾向が認められ、歯牙喪失に対する治療が適切に実施されている歯科医師においても、十分な栄養摂取には歯牙喪失の予防が重要であることが示唆された。 来年度は追跡調査を継続するとともに、未調査の県歯科医師会においてベースライン調査を追加実施する予定である。
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