研究課題/領域番号 |
16390191
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
法医学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 謙一 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40166947)
|
研究分担者 |
上村 公一 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30244586)
新谷 香 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50345047)
木村 博子 順天堂大学, 医学部, 講師 (00053299)
|
研究期間 (年度) |
2004 – 2005
|
キーワード | 虚血再灌流 / 一酸化窒素 / 活性酸素 / 血流 / 過酸化脂質 / 心筋細胞死 / メタボリック症候群 / 炎症 |
研究概要 |
短時間虚血(30分以内)後の再灌流時には、血管が開くが比較的長時間(45分以上)後の再灌流時には血流が止まる(no reflow)。この現象をラットの冠動脈閉塞モデルで再現した。また、微小酸素電極を心室壁に挿入し、酸素消費量の記録により、虚血による組織酸素消費量の低下、再灌流時、短時間虚血後には酸素消費の増大、長時間虚血後にはその減少を確認した。 血管は血管内皮の一酸化窒素(NO産生酵素(eNOS)のセリン(Ser1177)残基が、PI3kinase/Aktでリン酸化される結果、活性化され、拡張する。eNOS-Ser1177リン酸化を検出する抗体などを用いた免疫組織化学法により、短時間虚血後、eNOS活性化により血管が拡張し、反対にeNOS活性化抑制が、長時間虚血後、血流が停止することを見出した。また、活性酸素を産生するNADPH oxidase、及びProtein Kinase C(PKC)に対する阻害剤、及抗酸化剤が、長時間虚血による血流停止を解除することを見出した。 NOは活性酸素O2-と反応してperoxynitrare(ONOO-)を生成する。ONOO-は蛋白質のtyrosine残基と反応してnitrotyroisne(NT)を生成し、その活性を阻害する。しかし、虚血再灌流時、NTの生成は血管の拡張を促進していた。また、心筋細胞の細胞死(apoptosis)をNTが促進することを見出した。4-hyrodoxynonenal(HNE)は脂質過酸化の結果生じ、細胞膜の脂質や種々のタンパク質を修飾する。また、HNE自体が細胞死に繋がる情報伝達系を活性化することが知られている。虚血再灌流時、血管壁や心筋にHNEが生成しているが、血管の開存度との関連性、心筋の細胞死との関連性は認めなかった。動脈硬化に炎症が寄与しており、炎症には酸化ストレスが寄与している。HNEの高感度測定法(時間分解蛍光測定法)を開発し、リポ多糖(LPS)注射ラットの血中、腸管粘膜のHNEが一過性に増加すること、各々、単球、形質細胞から活性酸素を発生し、HNEがIgG及びIgAを修飾することを見出した。HNE化されたIgAが腸管粘膜に広く拡散しており、また、重合体化し殺菌能を失っていた。 卵巣摘出ラットに情動ストレス負荷による血圧上昇、血中HNE増加、内臓肥満、インスリン抵抗性を見出した。エストロゲン補充によって、腸間膜血管のeNOS発現が上昇し、これらの反応が抑制された。これはメタボリック症候群、及び閉経女性の心血管リスク増加を研究する最適のモデルと考えられる。若年と閉経後の女性に心理ストレス負荷をかけると、後者でのみ、ストレス負荷後、回復期に拡張期血圧が高く、血中HNE値が高値を示した。しかし、身体的ストレスでは認められなかった。
|