研究概要 |
慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome:CFS)を疑われ紹介された患者、あるいは患者自身でCFSを疑って来院した患者はこの平成16・17年度で53名に達した。その患者群に対し、以下の項目について検討を継続している。 一般的身体疾患を除外するための諸検査。 疾患との関連が疑われているウイルス・リケッチャの抗体価の測定。 精神科専門医による精神科的疾患の鑑別。 DNAチップ用による末梢血白血球の遺伝子発現プロファイリング。 治療は基本的に「証」に応じた漢方療法を行い、改善度については定期的にWHO-QOL26で評価。 得られた結果は以下に集約される。 1)HHV6,HHV7:2004年度に有意な抗体上昇は2例認めたが、それは活動を示唆するものではなく、HHV6,7による疾患ではないことが推定される。 2)Q熱:現在44例中1例も有意な抗体上昇は認められなかった。Q熱との関連は示唆されない。 3)精神科評価で多かったのは、今年度も「慢性疲労症候群と2次性うつ状態」であった。 4)DNAチップ用による解析では、単純疲労・鬱病等による疲労の発現パターンとは異なる遺伝子発現パターンが観察され、慢性疲労に特徴的な遺伝子群の同定にすでに成功した。 5)「証」は一定の傾向をしめさない。したがって治療経過中にも「証」が変化し、処方も変化してしまうことから、「証」の見立てと「証」に応じた治療対応の重要性が明らかとなった。 本年度は、上記2)について慢性疲労を訴える患者におけるQ熱リケッチア保菌の可能性に関する検討、ならびに5)について漢方治療による治療効果の検討を発表した。なお慢性疲労症候群の診断に有用な遺伝子群については既に特許出願済みである。
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