研究概要 |
平成16〜18年間の研究期間に慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome : CFS)を疑われて紹介された、あるいは患者自身で疑い来院して本研究の対象となった患者は60名であった。この60名を対象に、以下の諸項目を検討した。 (1)一般身体疾患を除外するための諸検査。 (2)疾患との関連が疑われているウイルス、リケッチャの抗体価の測定。 (3)精神科専門医による精神科的疾患の鑑別。 (4)DNAチップ用による末梢血白血球の遺伝子発現プロファイリング。 (5)治療は基本的に『証』に応じた漢方療法を行い、改善度についてはWHO QOL26で評価した。 得られた結果は以下に要約される。 1)HHV6,HHV7:有意な抗体上昇は、4例に求めたが、CFSに特異的な所見は認められなかった。 2)Q熱:有意な抗体上昇を認めた症例は無かった。 3)病型は大きく4分類することが出来た。その内訳は、詳しい臨床的検討が可能であった26例の内、CFS8例、精神疾患11例、身体疾患4例、診断保留3例であった。 4)DNAチップ用による解析では、単純疲労、うつ病による疲労とは異なる遺伝子発現パターンが観察され、慢性疲労症候群に特徴的な発現亢進している遺伝子7、低下している遺伝子2の同定に成功した。 5)証は一定の傾向を示さず、また治療経過中にも『証』が変化し、漢方療法は画一的な処方が不可能で、西洋医学的な治療効果の研究・解析方法にはなじまないことが明らかとなった。
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