研究概要 |
当該研究期間における研究成果の概要を如何に記す。 1.人工菌叢マウスを用いて、拘束ストレスに対するHPAaxisの反応性を無菌(germfree : GF),SPFマウスと比較、検討した。その結果、病原性大腸菌単一細菌マウス(EPEC)のストレス感受性は、GFマウスよりも亢進していたが、EPECの変異株(Tir遺伝子を欠損)のみで再構成された単一細菌マウスではHPA axisの反応性の変化は認めなかった。これらの結果は、細菌の違いによりストレス反応が変化しうることを示唆するものである。 2.脳内神経伝達物質濃度:specific pathogen free (SPF)マウス、GFマウス、およびBifidobacterium infantis (BI)、Bacteroides vulgatus (BV)単一細菌マウスにおける脳内norepinephrine, serotonin濃度を測定した。その結果、GFおよびBVマウスではSPFマウス、BIマウスと比較し、cortex, hippocampus CA3領域でのnorepinephrine濃度が有意に低かった。またBVマウスでは、cortexにおけるserotonin濃度が他のマウスと比較し、著明に低下していた。一方、脳内各部位でのGABA濃度に関してはマウス群間で違いは認めなかった。cortex, hippocampusはHPAaxisの機能制御を司るばかりでなく出生後に成熟、発達する代表的な部位であることより、GFマウスではnorepinephrine, serotonin系神経の脳内神経分布が十分に発達していない可能性を示唆している。 3.GF,SPFマウスにおいてグルココルチコイド抑制試験を行った。すなわち両群マウスにあらかじめ各濃度のコルチコステロンを投与し、HPA axisのストレス反応がどのように変化するか、について比較、検討した。その結果、GFマウス、SPFマウスのID50(50%抑制するのに必要なコルチコステロン量)は、それぞれ、3.65mg/kg、0.98mg/kgであった。この結果は、GFマウスにおけるHPAaxis高反応性をさらに裏付けるものであり、GFマウスにおけるフィードバック機構の機能不全を示唆するものである。
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