研究概要 |
E1遺伝子に変異を有するアデノウイルスは,癌細胞特異的に増殖,癌を融解し,欧米の臨床治験でも画期的有効性を示し注目されている。胆道癌は進行期に発見され根治が難しい予後不良な癌であるが,遺伝子治療の研究は乏しい。最近,我々はE1変異アデノウイルスの胆道癌に対する実験的有効性を報告したが,その過程で,約半数の胆道癌細胞で治療効果が乏しいことも見出した。アデノウイルスの感染は,通常,細胞表面Coxsackievirus Adenovirus Receptor(CAR)を介するが,最近,ファイバーの改変(RGDモチーフの導入)がintegrinを介した感染により癌細胞への感染効率を改善することが報告された。しかし胆道癌での検討はない。本研究では胆道癌に対するE1変異ウイルスの治療効果と細胞表面受容体(CAR, integrin)の関係およびファイバーをRGD改変したE1変異アデノウイルスの有効性を実験的に解析することを目的とした。本年(16年)度は,「胆道癌に対するE1変異アデノウイルスの治療効果と感染効率,細胞表面受容体(CAR, integrin)の関係」を検討した。その結果,1)胆道癌細胞におけるアデノウイルスの感染効率はCARの発現と有意に相関すること,2)ほとんどの胆道癌細胞ではintegrinが強発現していること,3)E1変異アデノウイルスの治療効果の乏しい癌細胞では,CAR発現が乏しく,アデノウイルス感染効率が低い傾向にあることが判明した。現在,ファイバーをRGD改変したE1変異アデノウイルスの胆道癌における感染効率と抗腫瘍効果を検討中である。
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