研究課題
今年度は、1)アシル及びデスアシルグレリンと悪液質の病態、2)新たなグレリン遺伝子産物であるオベスタチンの作用、および3)悪液質にかかわる可能性のある副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)の作用を検討してきた。1)のグレリン、デスアシルグレリンと悪液質の関係の研究は進展し、食欲促進作用を有するアシル型の相対的低下および食欲抑制作用を示すデスアシル型の相対的優位が、摂食障害を含めた悪液質一般に認められる特徴であることが明らかとなった。現在、アシルグレリンの摂食障害への治療的応用を開始している(第二相臨床試験)。2)のオベスタチンの作用やその受容体機構に関しては、世界的にも混乱した状態にあるが、我々はオベスタチンがやはり弱いものの、食欲抑制、消化管運動抑制に働き、血中に分泌されるホルモンであることを明らかにした。3)のPTHrPと悪液質に関しては、PTHrPは高Ca血症を引き起こす原因物質として有名であるものの、食欲・体重調節に及ぼす影響は知られていない。我々はPTHrP末梢投与がマウス、ラットにおいて、迷走神経を介して食欲を抑制し、空腹期の胃・十二指腸運動を食後期のパターンに変化させ、胃排出能を抑制すること、そしてPTHrP連続投与により、体重減少が生ずることを明らかにした。この作用は食に対する嫌悪によるものでないこと、また視床下部のウロコルチンを介する可能性が考えられた。以前の我々の検討成績とあわせ、PTHrPは高Ca血症を介さない特異的な食欲抑制効果を有し、悪液質の病態に深くかかわるものと考えられた。したがって、現在臨床応用が考慮されているPTHrPのモノクローナル抗体は、抗悪液質物質として有用である可能性を示した。グレリン作用を強化した合成ペプチドの作成は困難なこともあり,吸入による臨床応用を目指している。また、グレリンアゴニストとして使用しているGHRP-2が、大腸がん細胞接種マウスにおいて、化学療法(5-FU)による食欲不振を完全に抑えることを見いだし、その臨床応用が期待される。
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