研究課題
基盤研究(B)
本研究で目的としたことは、癌性悪液質の病態を特に食欲調節ペプチドの観点から明らかにし、それを基にして新たな治療手段を開発することにあった。その中で特に注目したのはグレリンであった。グレリンは胃から見いだされた強力な食欲促進ペプチドであり、我々はその作用が脳内視床下部に存在する神経ペプチドY(NPY)/アグーチ関連ペプチドを介すること、またNPYを介して、食欲のみならず空腹期の消化管運動を誘発すること、さらにこのグレリン-NPY系が飢えに対する応答に極めて重要であることを明らかにした。したがって、このグレリン-NPY系を増強させることが、悪液質の治療に有用と考えた。本研究の具体的成果をさらに記述する。グレリン-NPYが病態に深くかかわることを、colon26担癌マウスを用いて明らかにし、グレリンアゴニスト(GHRP2, Bowers教授提供)が担癌モデル動物の食欲を改善し、化学療法(5FU)による食欲低下を阻止することを見出した。この所見は、共同研究者のMantovani教授(イタリア)が鬱に伴う食欲低下を改善したヒトの成績(未発表)と一致するもので、癌性悪液質への応用を考慮している。また、グレリン遺伝子産物として、アシルグレリンに加えデスアシルグレリン、オベスタチンの作用を正常動物及びトランスジェニックマウスを用いて検討し、これらが食欲、消化管運動に抑制性の作用を発現し、グレリンとの相対的豊富さが、最終的な応答を形成する可能性を示唆した。その他、高カルシウム血症を誘発するPTH関連ペプチドも悪液質に関与する可能性を報告中である。現在、悪液質を呈する神経性食欲不振症にグレリン投与を行っており、癌性悪液質患者へのグレリン、もしくはグレリンアゴニストの臨床応用も近いと考えている。癌への統合医療の一環として、その発展が期待される。
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