DNAミスマッチ修復遺伝子の異常による単純繰り返し配列の遺伝子不安定性つまりマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability ; MSI)は、家族性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)、散発性の胃・大腸・子宮体癌、重複・多発癌などの発癌・進展機構として極めて注目されている。本研究では、癌関連遺伝子のnon-coding領域のマイクロサテライト配列における変異の役割を明らかにし、MSI陽性消化器癌の発癌(特に、早期)・進展機構を解明することを目的とした。昨年度明らかにしたnon-coding領域のマイクロサテライト配列における変異により調節を受けうる癌関連遺伝子に関して詳細に解析を進めた。5'-UTRにモノヌクレオチドリピートを有する標的遺伝子は、MSI陽性癌で発現が低下していた。5'-UTRにおけるマイクロサテライト配列の変異は、転写の低下に関わっていると考えられ、癌抑制遺伝子の不活化機構のひとつとして重要であることを示した。一方、3'-UTRにモノヌクレオチドリピートを有する標的遺伝子は、MSI陽性癌で発現が亢進し、同時にリピート数が短縮していることが多いことを明らかにし、癌遺伝子の活性化機構のひとつとして重要であることを示した。Poly(U)-tractの長さとRNA安定性、プロセシング、翻訳効率との関連も明らかにした。上記の成果をもとに、検索範囲を拡げ、昨年度網羅的に明らかにした遺伝子に関し、個々の遺伝子発現と5'-UTRあるいは3'-UTRマイクロサテライト配列の変異との対応関係について示した。
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