研究課題
基盤研究(B)
腸上皮化生は、胃癌をはじめパレット食道癌などの前癌状態として重要であることが知られている。しかし、本来の粘膜上皮が腸上皮に形質変換する機構については不明であった。われわれは、転写因子CDX1,2の発現がこの形質転換に重要な役割を果たしていることをあきらかにしてきた。特に、CDX2を胃に異所性に発現させることにより、腸上皮化成トランスジェニックマウスを作成することに成功した。さらにこのマウスでは長期維持することによりほぼ100%のマウスに分化型胃癌の発生が見られることを報告した(Cancer Res. 2004)。このマウスにおける胃癌では、ヒト胃癌と同様、多くの場合p53やAPC遺伝子変異を伴っており、ヒト分化型胃癌発生モデルとしても有用であることが示唆された。またこのマウスをp53欠損マウス、あるいはAPC遺伝子変異マウス(Min)と交配すると、胃癌発生が短期間に起きることも明らかとなり胃癌発生が多因子の影響を受けてその発生時期が決まってくることも示された。一方、われわれは腸上皮化生粘膜では、基底膜側に通常の胃粘膜には見られないPericryptal fibroblastが誘導されることも見出し報告した(Gut 2005)。これは上皮-間質間の相互作用が上皮細胞のシグナルによって誘導されることを示した知見であり、今後上皮間質相互作用の分子機構について詳細な検討を行う予定である。また腸上皮化生では、腸上皮に見られる内分泌細胞が発生してくるが、そのメカニズムとしてCDX2による別の転写因子Math 1が重要な役割を果たしていることを明らかにし報告した(Differentiation in press)。腸上皮化生に先立つ変化として萎縮があるが、この過程に形態形成因子であるSonic Hedgehogが関与している可能性についても検討を行い、欧州消化器病学会で報告した。
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Differentiation (in press)
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