研究概要 |
1・プロテアーゼ断片化TGF-β抗体の作製: 昨年度作製した組換えヒト潜在型TGF-β1-GST融合タンパク質を用いて、昨年度決定したプラスミン(K55-L56)、血漿カリクレイン(R58-L59)、MMP3(A79-L80)以外のプロテアーゼによる切断部位の決定をこころみたが、MMP2,9,13,14,並びにカテプシンでは切断されず活性化されなかった。新たにプラスミン切断部位のK56並びにL59のみを特異的に認識する抗体を作製した。これらの抗体は、切断されていないLAPや、血漿カリクレインやMMP3で切断されたLAPは認識しなかった。さらに、これらの抗体で検出される潜在型TGF-β1断片が生成する時には、同時に活性型TGF-β1が生成することを確かめた。 2・ヒト疾患組織標本の染色: 各種硬化性疾患患者の病理組織切片を染色したところ、血漿カリクレイン切断面に対する抗体、特にR58に対する抗体により劇症肝炎の患者肝臓が強く染色されるのに対して、プラスミン切断面に対する抗体では染色シグナルが検出できなかった。劇症肝炎の病態形成過程では、プラスミン依存TGF-β活性化反応よりも血漿カリクレイン依存TGF-β活性化反応が起こっていることが示唆された。また、皮膚組織では表皮でTGF-β2がメインに産生されるのに対して、真皮ではTGF-β1がメインに産生されることがわかった。 3・硬化性疾患の制御に関する研究: TGF-βシグナル伝達因子であるSmad2のリン酸化やSmad3の発現・リン酸化を抑制することにより、TGF-βシグナルをブロックし、肝星細胞の活性化を抑え、肝再生不全を改善するサイトキサゾンが、同じTGF-βファミリーのBMPのシグナルやMAPキナーゼシグナルには影響を与えないことを見い出した。
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