研究概要 |
1.病態・組織・アイソフォーム特異的プロテアーゼ断片化TGF-β抗体の作製: 血漿カリクレイン切断面認識モノクロナル抗体を作製した。N末側切断面認識ヒト化抗体クローンが6種類、C末側切断面認識マウスクローンが4種類、ヒト化抗体クローンが5種類とれた。今後、これらの抗体を用いて下述の新規肝疾患バイオマーカーsELISA商業用キットを作製する予定である。 2.断片化TGF-β抗体並びにアイソフォーム特異的LAP抗体を用いたヒト硬化性疾患患者組織標本の染色による診断: プラスミン/血漿カリクレイン切断面認識抗体とアイソフォーム特異的LAP抗体を用いて強皮症患者皮膚組織を染色した結果、皮膚ではプラスミン/血漿カリクレイン非依存的にTGF-β2が活性化されており、同抗体は、肝臓と皮膚の比較に於いては、肝臓特異的にTGF-β活性化反応を検出することがわかった。また、四塩化炭素ラット肝障害モデル、胆管結紮肝線維化モデルを用いて、同抗体を用いたsELISAで検出されるLAP断片が新規肝疾患バイオマーカーとして使えることがわかり、来年度より慈恵医大の協力の下、患者血清を用いた疾患応答性を調べていく予定である。 3.プロテアーゼ阻害剤を用いた硬化性疾患の制御: TGF-β活性化反応だけ阻害するプロテアーゼ阻害剤をみつけることはできなかったが、潜在型TGF-β1分子中のプラスミン/血漿カリクレイン切断部位のK56-L57/R58-L59を含むQ52-P62ペプチド、さらに、切断部位アミノ酸を全てAlaに置換し切断されないようにした変異デコイペプチドが、10mg/kg,i.v.でTGF-β活性化反応を競合阻害し、肝疾患の病態形成を抑制することを、LPS前投与肝部分切除マウス肝再生不全モデルで確認した。TGF-β活性化反応の特異的阻害に基づく肝疾患治療薬として今後、発展させていく予定である。
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