研究概要 |
肝疾患の主要病因因子TGF-βは潜在型複合体として産生され、25kD活性型TGF-βが解き放たれる反応(TGF-β活性化反応)を経て、線維形成を誘導し細胞増殖を抑制する。肝疾患では、プラスミン,血漿カリクレインというプロテアーゼがTGF-β活性化反応に働いており、プロテアーゼ阻害剤により活性化反応を抑制すると病態形成を抑制できるという動物モデルでの結果に立脚し、 (1)TGF-β1活性化反応の際にプラスミンや血漿カリクレインによりTGF-β活性化反応の過程で切られる切断部位を同定し、切断面特異的認識抗体、すなわちTGF-β活性化反応が起こったことを認識する抗体を作製し、劇症肝炎患者肝切片が染色されることから、ヒトでも同じことが起きている可能性を世界ではじめて示した。 (2)本抗体を用いた免疫組織染色法とサンドウィッチEUSA法を確立し、動物モデル(四塩化炭素投与ラット障害モデル、胆管結紮ラット肝線維化モデル、LPS前投与肝部分切除マウス肝再生不全モデル)において、その有効性と既存マーカー(血清GOT/GPT,肝ハイドロキシプロリン量)との相関性を確認し、患者での疾患特異性の確認の実験に着手した。 (3)プラスミンや血漿カリクレイン切断部位を含むデコイペプチドを作製し、本ペプチドが肝星細胞におけるTGF-β活性化反応を抑制し、動物モデル(LPS前投与肝部分切除マウス肝再生不全モデル)で病態を改善することを示した。 (4)TGFβが関与する硬化性疾患でも、皮膚強皮症ではTGF-β2が主に活性化され、これにはプラスミンや血漿カリクレインは関与しておらず、MMP9が関与していることを示唆する結果を得た。 (5)TGF-βシグナル伝達を担うSmadのリン酸化を抑制することを見出したCXZが動物モデル(LPS前投与肝部分切除マウス肝再生不全モデル)で病態を改善することを示した。
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