研究課題
心不全は要求する血液量を十分に拍出出来なくなる病態であるが、重症かつ難治性のものとして肥大型心筋症(HCM)や拡張型心筋症(DCM)がある。我々はこれまでにHCMやDCMの原因遺伝子の同定とその機能解析を遂行して来たが、それらの研究成果はZ帯機能異常と心不全との関連を強く示唆する。本研究ではZ帯構成要素の変異とその機能異常の解明とその是正方策の開発を目的とした。本年度の主な成果は以下の通りである。既知の原因遺伝子のいずれにも変異が検出されないHCM多発家系を対象とした連鎖解析を実施し、その原因遺伝子座を9.8Mbの範囲にマップした。この領域には約200の遺伝子が存在するが、それらの変異検索により全く新しい原因遺伝子が発見できると考えられる。一方、DCM症例の変異検索により、新規のDCM原因遺伝子としてFHL2変異を同定した。FHL2は心筋代謝酵素をタイチンリクルートするタンパクであるが、変異によってI帯およびM帯におけるFHL2-タイチンの結合を阻害することが判明した。また、Cypher結合タンパクを同定し、既に報告されているDCM関連Cypher変異がこのタンパクへの結合性を障害することを解明した。このタンパクも心筋代謝酵素の一種であるが、心筋細胞では通常細胞質に分布するが、ストレス負荷時にZ帯に移動することを明らかにした。これらとは別に、心筋収縮のカルシウム感受性を亢進する機能を有するPPIMのスモールサブユニットを高発現するトランスジェニックマウスを作製した。このマウスは突然死や心不全死を呈するが、病理所見は心筋細胞の錯走配列、単核球の浸潤、線維化などHCMの病理像と酷似していた。このことは、心筋収縮のカルシウム感受性亢進がHCMの直接の原因となることを示す。さらに、このマウスを用いて、PPIMのスモールサブユニットが心筋Z帯-I帯に分布することを見出した。
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