研究概要 |
これまで、VEGF-A治療により生じた新生血管は周皮細胞(pericyte)を欠き、血管透過性が更新していることが報告されている。一方、VEGF-Eトランスジェニックマウスにおいては、新生血管は周皮細胞も備えており、成熟した新生血管が形成されることが報告されている。また、VEGF-Aによる血管新生とは異なり、組織浮腫も少ないと報告されている。これらの観察より、VEGF-E/P1GFキメラ遺伝子を用いた治療においては、生じた新生血管はより成熟度の高い血管が生じる可能性がある。 結果 ラット筋肉における遺伝子発現 虚血下肢骨格筋への遺伝子導入後、RT-PCR産物はVEGF-A遺伝子は470bp,VEGF-E/P1GFキメラ#9およびVEGF-E/P1GFキメラ#33は461bpのバンドとして検出された。 下肢血流測定 レーザードップラーで評価した術後21日目における下肢血流量は、VEGF-A群、VEGF-E/P1GFキメラ#9群およびVEGF-E/P1GFキメラ#33群において、コントロールプラスミド群に比し、有意な下肢血流の増加を認めた(VEGF-E/P1GFキメラ#9vs.コントロール;84±5.8%vs.52±11%,p=0.0004,VEGF-E/P1GFキメラ#33vs.コントロール;82±8.3%vs.52±11%,p=0.0001,VEGF-A vs.コントロール;88±0.6%vs52±11%,P<0.0001)。VEGF-E/P1GFキメラ遺伝子導入による組織所見では、VEGF-A遺伝子治療群に比べて、炎症細胞特にマクロファージの浸潤が有意に少なかった。よって、より炎症反応の少ない状態で、VEGF-Aと同程度の血管新生効果が得られることが判明した。 考察 VEGF-A遺伝子ならびに2種類のVEGF-E/P1GFキメラ遺伝子(#9および#33)は、ラット下肢虚血部位筋肉内注射により遺伝子が発現することがRT-PCRにて確認された。さらに虚血下肢血流の評価により、2種類のVEGF-Eキメラ遺伝子(#9および#33)は、VEGF-A遺伝子と同程度に虚血部位の血流を改善させることが判明した。。
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