研究課題
これまでに種々のVEGFファミリー分子が、組み替え蛋白またはウイルスベクター・DNAプラスミドとして重症下肢虚血症例に投与され、血管新生を惹起することが確立している。しかしながらVEGF-A投与による炎症反応の惹起・血管透過性の亢進等により、投与部位の浮腫や場合によっては壊死などが副作用として問題となっている。VEGF-Eは、parapoxウイルス属のOrfウイルスより単離された分子であり、VEGFレセプター2に特異的に結合し、VEGFレセプター1には結合しない性質を持つ。近年VEGF-Eトランスジェニックマウスにおいて、従来VEGF-Aトランスジェニックマウスで報告されている皮下出血、細胞浸潤、浮腫の少ない組織所見が報告された。そこで我々は、ラット下肢虚血モデルを用い、VEGF-Eキメラ#9遺伝子およびVEGF-Eキメラ#33遺伝子、ヒトVEGF-A遺伝子が挿入された発現プラスミド(pcDNA3.1+)各200ug、およびコントロールプラスミドを筋肉内に投与、遠隔期に新生血管量・血流量を測定、また新生血管の質をVEGF-A遺伝子、対照と比較し、虚血性疾患に対する血管新生効果を評価した。各遺伝子の発現は投与された筋肉よりRT-PCR法により確認された。レーザードップラーによる下肢血流量は、VEGF-A群、VEGF-Eキメラ#9群およびVEGF-Eキメラ#33群において、コントロールプラスミド群に比し、有意な増加を認めた。また、組織学的評価による筋肉内の微小血管数は、VEGF-A群、VEGF-Eキメラ#9群およびVEGF-Eキメラ#33群において、コントロールプラスミド群に比し、有意な増加を認めた。さらに抗マクロファージ抗体であるED-1染色により、VEGF-Eキメラ#9群およびVEGF-Eキメラ#33群においては、VEGF-A群と比較し、有意に陽性細胞が少ない結果であった。さらに単球性細胞株、U937はVEGF-A刺激により遊走細胞数の増加、炎症性サイトカインIL-8、TNF-αの産生増加を認めたが、VEGF-E刺激による同反応は認められなかった。VEGF-Eキメラ遺伝子による遺伝子血管再生治療は従来のVEGF-Aによる治療で報告された浮腫、炎症惹起などの副作用が少ない画期的なものと考えられる。
すべて 2006 2005
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