研究概要 |
【目的】我々は、ES細胞(胚性幹細胞)を用いて血管および心臓の分化研究を行ってきた。本研究は、ES細胞を用いて、ペースメーカー細胞や心室筋細胞など機能特化した多様な心筋細胞を特異的に誘導する新しい方法を開発し、治療対象に的確にマッチし効果的かつ副作用の少ない新たなフェーズの心臓再生法を開拓することを目的とする。すなわち、1)効率的心筋分化誘導法の開発。2)心筋分化過程の解析。3)機能特化心筋細胞(ペースメーカーおよび心室筋)特異的分化誘導法の開発。4)種々の誘導細胞の純化と動物移植実験による移植効果の検討。5)機能的至適移植細胞を用いた新しい機能選択的心臓再生法の開発。の5項目の検討を行い、心筋再生の新たな可能性を開拓する。 【結果】ES細胞由来Flk1陽性細胞から単一細胞レベルで心筋を分化誘導することが可能な新しい心筋分化誘導システムを構築した。心筋細胞分化誘導効率は、従来の胚様体法の約2-3倍であった。αMHCプロモーター/GFP遺伝子を用いて誘導心筋細胞を純化した。電気生理学的検討および免疫染色により、誘導心筋細胞には、ペースメーカー細胞、心室筋細胞および刺激伝導系細胞が混在していることが明らかとなった。心筋前駆細胞の予見的同定を試み、高い心筋分化能を有する心筋前駆細胞の同定に成功した(Yamashita et al,論文改訂中)。現在、誘導心筋細胞および前駆細胞の動物移植実験、ペースメーカー細胞の効率的分化誘導系の構築、および心筋分化における細胞レベルでの遺伝子プロファイルの検討を行っている。 【結語】効率よく心筋細胞を分化誘導できるとともに、心筋分化過程の解析も可能な新しいES細胞心筋分化系を構築した。同システムを用いて新しい心筋前駆細胞群の同定に成功した。本システムを用いて新たな心筋再生法の開発が可能となると考えられる。
|