研究概要 |
我々はANP/BNPがあらゆるタイプの心不全で遺伝子発現が亢進することより、ANP/BNP遺伝子の心不全時に於ける再発現機序を解明することが、その背後に存在する心不全発症の分子機序の解明に繋がるかとの仮説を立て研究を遂行してきた。その過程で興味深い転写調節系であるNRSE/NRSF系を同定した。NRSFはNRSE配列を有する遺伝子に結合し協力に転写を抑制するが、ANPやBNPなどの胎児遺伝子の多くはNRSE配列をその転写調節領域に有しており、NRSFによって転写抑制されている。心不全ではその抑制が回避されANP、BNP等の胎児型遺伝子の転写が亢進することが判っていた。優性劣性変異体であるdominant negative NRSFを心筋細胞に特異的に波状発現したマウス(α-MHC-dnNRSF-Tgマウス)生後8周より心不全を呈し、心室性不整脈で死亡する。本研究ではNRSFの標的遺伝子のなかで、心不全や不整脈の発症に寄与している遺伝子を同定する目的で、a-MHC-dnNRSF-Tgマウスで野生型マウスより発現亢進している遺伝子でNRSE配列を有している、G蛋白質ファミリであるGalphaO(Gαo)、ドーパミン受容体のサブタイプであるD2受容体、Neuropeptideファミリーであるneurotensinに対する2型受容体(NTSR2)、さらにはHCN2,HCN4,HCN1,CACNA1Hなどのチャンネル遺伝子のなかから、Gαo、とCACNAIHの心筋特異的過剰発現マウスを作製した。 α-MHC-Gαo-Tgマウスは、正常に生まれ、正常に発育する。また、大動脈縮窄とうの負荷を加えても野生型と比べて変化が認められなかった。 α-MHC-CACNA1H-Tgマウスは、非常にF1が得られにくく、胎児死亡している可能性もあるが、1つだけ生まれてきた系統では、過剰発現は認められるものの、野生型と大きな差を認めなかった。蛋白の発現量の確定が未だ出来ていないが、これら二つの遺伝子はNRSFの標的遺伝子ではあるが、α-MHC-dnNRSF-Tgマウスの形質を説明する遺伝子ではないと考えられた。
|