研究概要 |
特発性肺胞蛋白症は、肺胞及び終末気管支に過剰なサーファクタントの貯留がおこり、労作時の呼吸困難を来す希な疾患である。無症状から重篤な呼吸不全により致死的な症例まで、予後は多様であるが、一般的には予後良好な疾患とされている。病因は長い間不明であったが、主任研究者は1999年に、病因物質として患者の肺及び血液中に抗顆粒球マクロファージコロ昌一刺激因子(GM-CSF)中和自己抗体が大量に存在することを発見し(J Exp Med190(6),875-880,1999)、本疾患の病因は、肺胞マクロファージの分化・機能維持に重要な肺のGM-CSFが自己抗体により中和され、肺胞マクロファージのサーファクタント分解能が低下するためであると考えられる。一方、全国アンケート調査で明らかとなった安静時動脈血酸素分圧が70mmHg未満の重症者は46例で全体の23%である。これまで、こうした重症者に対する治療は、全身麻酔下の全肺洗浄法や気管支ファイバースコープによる反復区域洗浄が一般的で、患者の負担や苦痛が大きく、新治療法が望まれていた。近年、オーストラリアのSeymourらが始めたGM-CSF連日皮下注療法は、肺洗浄によることなく、重症患者の44%に呼吸機能の改善をもたらすことが報告されている。GM-CSFの全身投与は時に悪寒戦慄などの副作用を惹起することや、疾病が肺に限局していることから、我々は、GM-CSFを吸入で投与することを思い立ち、2001年以降、重症患者3例にGM-CSF吸入療法を試み、呼吸機能が劇的に改善すること、また、肺胞洗浄液中の自己抗体が消失することを確認した。
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