研究課題
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は成人男性に発症する遺伝性運動ニューロン疾患であり、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子のCAG繰り返し配列の異常延長を原因とするポリグルタミン病である。SBMAでは、他のポリグルタミン病と同様、病因蛋白質である変異ARが神経細胞の核内に蓄積することが神経変性の病態の中心であると考えられている。これまで我々は、SBMAのマウスモデルにおいて男性ホルモン依存性の変異AR核内集積が症状や病理所見の性差の原因であり、外科的去勢やテストステロン分泌抑制剤であるLHRHアナログのマウスへの投与により変異AR蛋白質の核内集積が抑制され、神経変性が著明に抑止されることを明らかにしてきた。この結果に基づき、我々は50名のSBMA患者に対するLHRHアナログのプラセボ対照比較試験を実施した。その結果、1年間のLHRHアナログ投与により陰嚢皮膚における変異AR蛋白質の核内集積が有意に抑制され、血清CKも有意に減少した。また、嚥下造影で嚥下機能を評価したところ、1年間の観察期間でプラセボ群では咽頭部バリウム残留率の増加がみられたが、LHRHアナログ投与群では低下が認められた。以上より、本治療法はSBMA患者においても変異ARの核内集積を阻害し、神経変性の病態を抑止するものと期待される。また、陰嚢皮膚の抗ポリグルタミン免疫染色のバイオマーカーとしての有用性を検討するため、抗ポリグルタミン抗体1C2を用いて、SBMA患者における陰嚢病理所見と脊髄病理所見、および臨床症状との関係につき解析した。その結果、剖検例においては陰嚢表皮細胞への変異AR蓄積と程度と脊髄前角細胞における蓄積の程度は相関する傾向が認められた。また、生検陰嚢皮膚における変異AR蓄積の程度は運動機能スケール(Noriis score)と相関し、AR遺伝子のCAGリピート数とも相関が示された。以上より、1C2を用いた陰嚢皮膚における変異AR蓄積の程度の評価は、SBMAの病態を反映する優れたバイオマーカーと考えられる。
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