研究課題
基盤研究(B)
研究の目的:モデル脳を用いてヒトの高次視覚認知調節機構を解明する。具体的には、低頻度反復磁気刺激(rTMS)による脳仮想病変患者と初期のアルツハイマー病(AD)やその予備群である軽症認知障害(MCI)患者において、顔・運動認知の高次視覚認知課題を負荷し、その障害パターンを心理物理学的、神経生理学的検査(視覚性事象関連電位(ERP)、脳磁図(MEG)、機能的MRI(fMRI))を用いて検討した。研究成果1)顔認知は4次視覚野(V4)、運動認知は5次視覚野(V5)が高次中枢である。顔認知には顔写真を画像フィルタリング処理し、粗い顔(顔の全体像と表情)と輪郭のみの顔(顔の細部構造と同定)を作成した。運動視には、水平および放射状に動くコヒーレント運動課題を作成した。2)運動認知の閾値、反応時間などの測定から運動視機能が加齢により低下することを認めた。興味ある知見としてMCIやADでは健常老年者と比べて著明な閾値の上昇を認めた。3)顔認知および運動視課題を用いて視覚性ERPを記録して脳機能マッピングを行った。顔認知では、後頭部初期成分のP1が顔の全体処理に関わることを見つけた。N170は顔の同定に、N170に続く緩徐陰性電位(N250-400)は表情処理に関与することを証明した。さらに放射状方向の運動に特異的な電位P200が頭頂部より記録された。MCIではP200成分が遅延ないし消失することを見いだした。現在、MEGおよびfMRIで顔・運動認知の処理過程を詳細に検討している。4)健常人において10分間低頻度rTMS(0.9Hz)をV1やV5に行うと、運動視の反応時間が明らかに延長し、その効果は約40分持続した。rTMSにより脳仮想病変が作成でき、高次視覚機能に関わる脳内ネットワーク処理を検討する上で、rTMSは貴重なツールになると考えられた。
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