研究概要 |
(1)パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで頻度の高い神経変性疾患であるが,根本的治療がなく、高齢化社会に伴い大きな問題になっている。我々は,病気の完治を目指し,脳内の神経幹細胞を活性化することによる治療が有効であることやウイルスベククーを用いたパーキンソン病の神経細胞死抑制による遺伝子治療の研究で世界をリードしてきた.しかし,ウイルスベクターは実際の治療に使用するには倫理的,安全性,費用面など克服しなければならない問題が多い事も事実である.安全な蛋白質を脳内に持続注入することによる脳内神経幹細胞活性化療法を確立し証明する.これらの基礎実験は,すでにratを用いて確認している. (2)今回は、MPTPサルを用いてその有効性を証明する。パーキンソン病の治療研究において、実際に臨床使用を行うためには、世界的にも猿を用いた研究が必要不可欠であり、MPTPサルの黒質神経細胞死抑制と臨床症状の改善が期待できる。HGFは,日本独自の神経栄養因子であり,神経細胞死抑制の機序は共同研究者の船越がすでに報告している. (3)我々は,ratに改変レトロウイルスベクターで幹細胞をマーキングすることにより成体脳神経前駆細胞が嗅球ドパミン神経細胞に分化することを世界に先駆け報告した.またそれが,MPTP投与により増加していることを確認した.この方法を用いてHGFの神経再生能につき猿を用いて検討した.MPTP投与マウスに持続ポンプを定位脳手術で植え込みHGFを持続注入した。MPTP投与後は動きが鈍くなりパーキンソン病症状を呈した。HGF投与による運動症状の改善が一匹のみだが確認ができた。現在免疫組織化学にて病理学的評価をしている。 今後同様の系で例数を増やし検討を行う。
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