研究概要 |
α-dystrogiycan(α-DG)とα-dystroglycanopathy遺伝子産物の相互作用を明らかにすることを目的として,α-DGのN末端ドメインのプロッセッシングに関する検討を行った.合成ペプチドをウサギに免疫し,α-DGコア蛋白質のN末端ドメインに対する抗体(AP1528)およびC末端ドメインに対する抗体(AP1530)を作製した.これらの抗体とα-DGの糖鎖部分に対する抗体(IIH6)を用いて,各種の培養細胞におけるα-DGのN末端ドメインのプロッセッシングを検討した.α-DGのlaminin結合能はプロットオーバーレイ法を用いて解析した.イムノブロット法とELISA法でヒト脳脊髄液中のα-DG-Nの発現を解析,定量化した.AP1528により,神経系の細胞を含む各種の培養細胞系の培養上清中に分子量約35KDのα-DG-Nのバンドを認めた.PCの阻害剤であるCMKを添加すると培養上清中の同バンドは認められなくなった.α-DG-Nはヒトの脳脊髄液と血清にも認められた.ヒトの脳脊髄液のα-DG-NはNならびに0型糖鎖を持つ糖蛋白であった.ELISA法による定量では正常圧水頭症患者11例の脳脊髄液α-DG-Nは平均2.44μg/ml(SD=1.07)であり,総脳脊髄液蛋白の約1/100〜1/200に相当した.以上の結果から,PCによるα-DGの切断は筋組織のみならず生体内の広範な組織において生じているものと考えられたα-DG-Nは脳脊髄液や血清に検出されることから,切断後には速やかにこれら体液中へ移行するものと考えられた.脳脊髄液に高濃度に存在することはα-DG-Nが中枢神経においてらかの重要な機能を果たしている可能性が考えられる.
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