研究課題
細胞死抑制蛋白質の導入による脳梗塞治療にかんしては、本年は4報の論文を発表した。さらに、水素の吸引は極めて脳梗塞治療に効果的であることを見いだした。_OHは最も強力な活性酸素種で核酸、脂質および蛋白と無差別に反応する。この_OHを解毒する機構は知られておらず、従って、_OHを除去することが最も重要な抗酸化プロセスとなる。私たちは、生体内で水素分子(H2)が有効な抗酸化物質となりうることを見いだした。抗酸化物質としての水素分子を医療へ応用できるか調べるためにラットの虚血モデルを用いた。大脳虚血においては多様なメカニズムで活性酸素種が発生し、虚血再還流後に_OHが発生する。我々はラットを軽度大脳動脈閉塞によって90分間局所的に虚血し、次いで30分間再還流した。その際水素ガスは全120分間吸引させた。ラットには笑気(麻酔のため)、酸素及び水素を66-70%、30%、0-4%(体積/体積)の比率で混合したガスを吸引させた。大脳動脈閉塞1日後に脳をスライスし、ミトコンドリアにおける呼吸過程で基質である2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム塩(TTC)で染色した。梗塞体積は脳の白く見える領域を測定することで推算し、梗塞体積が水素濃度依存的に減少することが明らかに認められた。軽度大脳動脈閉塞1週間後、水素処置群と未処置群での梗塞体積の違いはより顕著になった。水素処置ラットは体重および体温でも未処置に比して改善が見られた。このように水素分子は初期の脳障害を改善したのみならず障害の進行も抑制した。脳の同一領域をミクログリア特異的抗Iba-I抗体で染色したところ、抗Iba-I抗体による染色は水素処置によって顕著に減少していた。ミクログリアの集積は脳障害の指標であり、こうした結果は水素分子が酸化ストレスと、さらには脳障害を顕著に抑制することを強く示唆している。
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