研究概要 |
メタボリックシンドロームやマルチプルリスクファクター症候群は、高トリグリセリド血症、低HDL血症、耐糖能異常、高血圧などの動脈硬化症危険因子が重積している状態を指し、症候群として一括されている。メタボリックシンドロームでは食事療法が奏功することからもわかるように、個体全体としてはエネルギー代謝が過剰になったバランス破綻とも捉えることができる。エネルギー代謝関連遺伝子の異常は、転写レベルでの変動が主体となり、エネルギー転写調節因子として、核内受容体PPARファミリー、LXRファミリー、SREBPファミリー、Foxoファミリーなどが、エネルギー代謝の生理的調節に関わる。特にインスリン抵抗性について、網羅的解析から肝臓における脂質合成転写因子SREBP-1cが関与している可能性を見出した.ob/ob、db/db、IRS-2KO, SREBP-1cトランスジェニックマウスなど種々のインスリン抵抗性モデルマウスでは、肝臓のSREBP-1cの活性化が認められた。アデノウイルスを使って肝臓でSREBPを過剰発現させたところ,肝臓におけるインスリンシグナルの中心的な存在であるIRS-2に対してSREBPが抑制的に働くことがわかった.SREBP-1cのIRS-2抑制の分子機序を明かにするためにヒトIRS-2プロモーターの解析を行ったところ、IRS-2プロモーターに報告されているインスリン応答性配列(IRE)にオーバーラップして、SREBPの結合配列(Sterol Regulatory Element, SRE)が存在し、重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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