研究課題
基盤研究(B)
近年インスリン抵抗性の発症において、血中への分泌蛋白を介した臓器間ネットワークの重要性が明らかとなってきている。その中でresistinは脂肪細胞から分泌され、インスリン抵抗性を惹起するadipocytokineとして同定された。resistinにはいくつかのisoformが知られているが、そのうちRELMβとγは栄養吸収の場である腸管のみから発現されているという特徴を有する。我々は、RELMβとγに対する特異的抗体を作成し、db/dbマウスや高脂肪食負荷マウスにおいて血液中濃度が上昇していること、腸管における発現量が有意に増加していることを見いだした。そこで、次に、RELMβとγ濃度のインスリン抵抗性への関与を明らかにするために、これらを過剰発現するトランスジェニックマウスを作成した。RELMβとRELMγトランスジェニックマウスは、これらを肝臓で発現し、血液中濃度の上昇を認めた。コントロール群と比較して、通常食下では血糖、体重に差が無いが、生後6週令で体重の重い個体ほど血糖の高い傾向を認めた。脂質に関しては中性脂肪が1.5倍程度上昇していた。さらに生後10週令から3週間程度の高脂肪食負荷を行ったところ、トランスジェニック群では空腹時血糖が上昇し、糖負荷試験及びピルビン酸負荷試験では有意に血糖上昇を認めた。この傾向は高発現の系統ほど顕著であった。このとき肝臓内及び血中脂質のプロファイルでも中性脂肪の上昇を認めた。各臓器の染色像を検討すると、トランスジェニック群では脂肪肝及び膵島の過形成を認めた。肝、筋でのインスリンシグナルを検討すると、IRS1,2の蛋白量が低下し、それに伴いPI3-kinase活性、Aktの活性が低下した。以上の結果から、db/dbマウスや高脂肪食負荷マウスにおいて血中濃度が上昇している腸管由来RELMは、インスリン抵抗性の憎悪に関与しており、糖・脂質代謝を抑制することが示唆された。
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