研究課題
我々は、Aktをbaitに用いたyeast two hybrid法によって、約200kDaからなる新規の結合蛋白を同定した。この結合は過剰発現の系のみならず、内因性に発現しているタンパク間でも、またGSTタンパクを用いたin vitroのシステムによっても確認された。さらに、他のAGCキナーゼには結合せず、AktのC端に特異的に強く結合することが示された。また、このタンパクを過剰発現させると、成長因子の非刺激下におけるAktのリン酸化レベルを顕著に上昇させる作用が認められたことから、我々はこのタンパクをAPE (Akt Phosphorylation Enhancer)と名付けた。Wortmannin やLY294002によってPI3-キナーゼを不活化するとAPEによるAktのリン酸化が認められないことから、APE自体がキナーゼ活性を有するのでは無く、結合することでAktをリン酸化されやすくするのか、または、Aktの脱リン酸化を抑制していることが示唆された。APEの発現は殆どの臓器に認められるが、最も高い発現は精巣とマクロファージに認められた。siRNAを用いて、培養細胞のAPEの発現を抑制するとDNA合成が抑制されること、また、APEとAktを過剰発現させると、DNA rereplicationが引き起こされることから、APEは細胞増殖やcell cycleの調節に関与している事が示唆された。また興味深いことに、癌細胞では発現が上昇している株が約半数に認められた。そこで、Hela細胞においてsiRNAを用いてAPEの発現を抑制すると、Aktのリン酸化が低下すると共に、抗ガン剤によるアポトーシスがより低濃度で誘導されることが示された。以上のことより、APEはAktを介したシグナル伝達の調節に重要な機能を有しており、糖代謝や血管機能に加え、細胞の増殖やアポトーシスの抑制に関与している事が強く示唆された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
J.Biol.Chem. 280(51)
ページ: 42016-42025
Circulation Res. 97(8)
ページ: 837-844
Am J Physiol Endocrinol Metab 289(3)
ページ: E474-E481
J.Biol.Chem. 280(18)
ページ: 18525-18535
Diabetologia 48(5)
ページ: 984-992
Nat Cell Biol. 7(4)
ページ: 392-398