研究概要 |
多因子疾患である糖尿病において、遺伝子間相互作用ならびに遺伝子と環境因子の相互作用を解明することにより、複雑な糖尿病体質の全貌を分子レベルで明らかにし、テーラーメードの予防法・治療法を構築することを目的として研究を進めた。2型糖尿病モデル動物であるNSYマウスを用いた全ゲノム解析によってマップした3つの主要遺伝子(Nidd1,Nidd2,Nidd3)を各単独でコントロール系統に導入した系統(コンジェニック系統)を作出し、表現型を詳細に解析することにより各遺伝子の機能を、環境因子との相互作用をも含めて解析した。その結果、コントロールマウスにNSYマウスのNidd1,Nidd2,Nidd3を各単独で導入したコンジェニック系統のうち、Nidd1コンジェニックではインスリン抵抗性・インスリン分泌低下・脂肪肝・耐糖能低下を認めること、Nidd2コンジェニックではインスリン抵抗性・・耐糖能低下を認めること、Nidd3コンジェニックではいずれの指標にも変化を認めないことが明らかとなった。遺伝子間相互作用を検討する目的でNidd1・Nidd2ダブルコンジェニックを作出して解析した結果、単独のコンジェニックの単純な合計よりもはるかに著明な耐糖能低下を認め、遺伝子間相互作用の存在が示唆された。NSYマウスに4週齢より蔗糖負荷を行ったところ脂肪肝、インスリン抵抗性、インスリン分泌低下が促進され、糖尿病の発症が著明に促進されたが、コントロール系統では全く変化を認めず、NSYマウスの遺伝子と環境間に相互作用が存在することが明らかとなった。各コンジェニック系統に同様の環境負荷をかけた際の表現型変化を検討中であり、プレリミナリーな結果として、Nidd1,Nidd2では表現型が増悪するのに対して、Nidd3では表現型に変化を認めないことが示唆されている。
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