新規の遺伝子操作モデル動物の開発を主軸とする代謝症候群病態解明へのアプローチを進めた。即ち、(1)脂肪細胞グルココルチコイド活性化のメタボリック症候群における病態的意義を検討する目的で、ヒト型の細胞内グルココルチコイド活性化酵素、11β-HSD1を強力な脂肪細胞特異的プロモーターの支配下に過剰発現させる新規の遺伝子操トランスジェニックマウスの樹立を完了した。(2)培養脂肪細胞解析系において、種々の炎症性サイトカインが11β-HSD1遺伝子発現を著明に誘導すること、種々のPPARγアゴニストが11β-HSD1遺伝子発現を著明に抑制すること、脂肪細胞における11β-HSD1活性化がインスリン感受性ホルモン、アデイポネクチンの分泌を著明に抑制することを明らかにした。グルココルチコイドが過剰に活性化された培養脂肪細胞に11β-HSD1阻害候補低分子化合物を作用させるとこのような脂肪細胞機能異常が是正されることが明らかとなった。(3)培養脂肪細胞や代謝症候群モデルマウスに対する11β-HSD1特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドの添加(投与)が脂肪細胞機能異常の改善(遺伝子発現プロファイルの正常化やアデイポサイトカイン分泌の正常化)や糖脂質代謝パラメーターの改善をもたらすことが確かめられた。(4)ヒト皮下脂肪組織バイオプシーにおいても肥満者の11β-HSD1遺伝子発現が著明に亢進していることを実証した。(5)メタボリック症候群の表現型と連鎖する11β-HSD1遺伝子多型を検索し、新規な多型の発見も含め我が国の遺伝的背景のスクリーニングを終了した。
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