研究課題/領域番号 |
16390269
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
妹尾 久雄 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40135380)
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研究分担者 |
小松 由紀夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (90135343)
村田 善晴 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80174308)
神部 福司 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教授 (00211871)
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キーワード | 甲状腺ホルモン / 甲状腺ホルモン受容体 / nongenomic action / PI3K(phosphatidylinosltol 3-kinase) / Akt / PKB(protein kinase B) / 甲状腺ホルモン不応症 / ZAKI-4α(カルシニューリン阻害蛋白) / mTOR(mammalian target of rapamycin) |
研究概要 |
1.甲状腺ホルモン不応症患者の皮膚線維芽細胞を用いた検討 正常者3名から採取された線維芽細胞を用い甲状腺ホルモン(T3)が、PI3K→Akt/PKB→mTORの燐酸化シグナリングカスケードを活性化することを確認した。この系の活性化は細胞質に存在する甲状腺ホルモン受容体(TR)がPI3Kの調節サブユニットp85aと複合体を形成し、更にこの複合体のTRにT3が結合することにより触媒サブユニットp110を活性化することが第一段階であることが示された。PI3KはAkt/PKBを細胞膜に誘導し、478番目のセリンの燐酸化を介して活性化する。活性化されたAkt/PKBは核内に移行し、mTORを活性化することが明らかにされた。T3によるmTORの活性化、5分〜30分と短時間であり、de novoの蛋白合成阻害剤であるシクロhキシミドにより阻害されないことからT3の転写を介さない作用であることが示された。従来T3は核内に存在するTRとの結合を介し、標的遺伝子の転写を調節するいわゆるgenomic actionがその作用機序であるとされてきた。本研究によりT3がTRを介するものの転写を介さないnongenomic actionにより作用を発揮することが明らかにされた。 T3によるPI3K→Akt/PKB→mTORの燐酸化シグナリングカスケードは、甲状腺ホルモン不応症(RTH)患者から得られて皮膚線維芽細胞においては認められず、RTHの発症に寄与していることが推察された。 2.神経細胞由来のN2aを用いた検討 PI3K→Akt/PKB→mTORの燐酸化シグナリングカスケードを活性化は、神経突起の伸展や神経の可塑性に重要な役割をはたすとされている。そのため、神経細胞由来のNeuro2Aを用いててT3がこのシグナリングカスケードを活性化するか否かを検討した。N2a細胞ではT3による活性化は認められず、TRα1を高発現するtransformanto(N2aTRα1)において認められた。この結果はNeuro2A細胞にはTRが殆ど存在せず、TRを介したT3のnongenomic actionがTRα1の高発現を介して発揮されたと考えられた。
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