研究概要 |
本研究においては、成人における成長ホルモン(GH)の功罪を明らかにするために、1)動物モデルを樹立し解析を行うことと、2)GHの標的遺伝子のハイスループット網羅的解析により得られた分子の機能を明らかにすることにより、GHの生理作用を好ましい作用と好ましくない作用に分子レベルでの分離と臨床応用をめざすという2本の柱で解析を進めた。1)においては、成人GH欠損症のモデルマウスを作製する目的で、GHをinducibleにノックアウトするための系として、temporally-controlled site-specific mutagenesisの方法を用いた。そのためにマウスGHの5つのすべてのエクソンをはさんでLoxPサイトを挿入したコンストラクトを作製しE14ES細胞を用いて相同組み換え体のスクリーニングを行った。2)については、これまでに培養細胞系でcDNA micoarrayを用いて、GHの標的遺伝子としてミトコンドリア関連遺伝子(Life Sci.7,2097,2004)およびミネラルコルチコイド受容体,可溶型グアニレートシクラーゼを同定した(論文作成中)。GHと老化、臓器障害の関係を考える上で非常に興味深い。さらにGH欠損ラットにおける肝臓、筋肉、骨における遺伝子発現のcDNA micoarrayを用いた網羅的解析をすでに行った。その結果、GHは肝臓において糖代謝、脂質代謝に関連する鍵となる酵素を調節しているだけではなく、シグナル関連分子や転写因子などの発現を調節していることが明らかになった(論文投稿準備中)。またGHの分泌調節機構の解明に関連して、胃切除患者におけるグレリンによるGHの反応について報告した(Eur J Endocrinol 151,447,2004)。
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